「生活習慣病と食生活」

広島県トレーナー協会名誉会長 加藤 秀夫 (県立広島女子大学)

 ヒトは40歳代を迎えると、お腹が出たり、胴のくびれが減り、貫禄がついたとか、中年太りになったと言われたりする。髪の毛が薄くなり始め、小さくて細かい字が見えにくくなる。若いころに比べて体重が増え、検診を受けると血圧や血糖、血中の中性脂肪やコレステロール、尿酸、肝機能などに異常値が多くなり、生活習慣病のラベルがはられる。
 この生活習慣病の背後に横たわるものとして、現在もっとも的を得ているとみなされているのが、体の「インスリン抵抗性」の増強という考え方である。満ち足りた生活環境のなかで、あまり運動をせず小太りになっていくようなライフスタイルをとりつつ年齢を重ねていくと、知らず知らずのうちにインスリン抵抗性が増大してしまう。インスリンに対する筋肉を中心とする末梢組織の感受性が低下すると、そのためにインスリンが過剰に分泌され、代償的に耐糖能などは一時的に改善される。
 しかし、高インスリン血症は肥満、耐糖能障害、高脂血症、高血圧等をきたしやすいとされている。そうだとすれば、インスリン感受性を改善すればこれらの生活習慣病の予防と改善が得られることになる。
一方、運動能力の高い人ほど死亡率が低く、高血圧の頻度も少ないことが報告され、生活習慣病の予防における運動の重要性が浮き彫りにされている。すでに、軽症の高血圧や糖尿病の運動療法として確立されている。
 また、健康人でも運動をしないとインスリン作用が徐々に減弱し、逆に運動するとインスリン作用が増強されることが知られている。運動によってインスリンの効き目(感受性)をよくして、少ないインスリンでより多くのグルコースを処理することができるようになる。つまり、日々の運動は膵臓からのインスリン分泌を節約しながら、血糖調節を行なうので糖尿病の予防に有益であるというわけである。
 私たちは、元気に生きている限り1日も食事と無縁ではいられない。食事が体をつくり、活動のためのエネルギー源となり、さらに体調を整える働きによって、生命を維持し、毎日の生活を健康的に暮らすことができる。食事には、これらの働きを果たすための栄養素が過不足にならないよう摂取することが大切である。糖質、脂質、タンパク質だけでなくビタミンやミネラルの一つでも不足すると、身体の働きが円滑に行われなくなり、健康を損なう原因となる。
しかし、からだに大切な栄養素も一度に大量にとりすぎたり、バランスを崩したりすると、逆に健康に悪く、生命を脅かすことになる。現代の人々の多くは好きなものを好きなだけ食べ、栄養的に偏った食生活を送っている。
 一方、外国の食材・料理が限りなく流入し、さらに加工食品や外食産業が発展するなど、健康的な食生活を主体的に維持するのは困難な状況になりつつある。また、「健康食品」と称する食品も大量に出回っているが、それらの中には、科学的な裏づけのあいまいなものも少なくない。私たちは、食事とそれに含まれる各栄養素の働きについて正しい知識と認識をもって健康的な食生活を送らなければならない。

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