「広島県トレーナー協会の在り方」

広島県トレーナー協会副会長  浦辺 幸夫 (広島大学医学部保健学科)

1.広島県トレーナー協会の目標
広島県トレーナー協会は1994年11月に発足したが、そのスポーツ医学面での目標について以下に記したい。競技スポーツの現場で、アスレティック・トレーナーの必要性に対する認識はたいへん高くなった。トレーナーの育成については(財)日本体育協会の公認アスレティック・トレーナーの制度が定着した感があるが、トレーナーの資質の向上についてはまだこれからである。
広島県では(財)広島県体育協会の組織の中にスポーツ医学委員会とスポーツ科学委員会があるが、スポーツ科学委員会の枠組みに「トレーナー班」を据えることで、公的な支援を受けながら「トレーナーの資質の向上を目指すこと」が可能になった。

2.アスレティック・トレーナーの有する問題
(資格)
公認アスレティック・トレーナーは2002年度で400名を越す人数になってきた。これまでのトレーナーの資格は何らかの医療類似行為者の資格を有する者、NATAの公認資格を有する者、自称「トレーナー」などであったが、これらが我が国では大枠で統合されたことになる。広島県は東京、神奈川、愛知、大阪、福岡などと並んで公認アスレティック・トレーナーが多い。これは、広島県トレーナー協会の推薦を受けた者の合格率が極めて高いことと一致している。
今後も、実績のある人を毎年最低1名は推薦したいと考えている。
(仕事)
公認アスレティック・トレーナーは講習内容を満たした専門学校や大学での養成も進んでいる。しかしながら、公認アスレティック・トレーナーによる学会や研究会も未だ発足できていない。今後、アスレティック・トレーナーの増加に対して、組織を基盤にした就職情報の提供などは不可欠であるが、これについても全く個々の対応しかない。
どの程度現場のニーズがあるのかあるいは常勤、パートタイム、ボランティアなど雇用形態についての調査が必要である。実際、専属のアスレティック・トレーナーとして競技団体に属するのはプロ野球、J-リーグ、いわゆるノンプロ(実業団)などである。特に、数年来のリストラで実業団での雇用は大幅に減少した。
それでも、アスレティック・トレーナーとして生計を立てようとする人は、個人事業主になって何カ所かのチームと契約したり、個人の顧客のパーソナルトレーナーになったり、それだけで不十分な人は他の仕事(多くは医療関係)とかけもちしたりする。「アスレティック・トレーナーの資格を得たが、職がない」ということは、大きな問題ではあるが、現状の認識がまず重要であろう。
(トレーナーの質)
このように公認アスレティック・トレーナーの取得を多くの人が目指すようになったが、職の不足のみが取りざたされている。しかし、もっと重要なことは「トレーナーがやっていいことは何か」を明確にするということである。行為の範囲の規定とスポーツにおいてどのような効用があるかが証明されないと職として成立することは困難である。
広島県トレーナー協会では、このような事実背景をもとに、トレーナーの資質の向上に努めてきた。
(会員の拡充)
まず会員になっていただくことで、スポーツに貢献しようとする意識がある人達のグループを形成する。そこには、職種などの制約は設けない。
トレーナーの目標の確認
スポーツ外傷や障害の予防、治療、リハビリテーション、教育、管理、環境整備などに必要な最低限の知識・技術を得ることが必要である。そのために解剖学、運動生理学、機能解剖学、運動学、バイオメカニクス、評価学、トレーニング、スポーツ医学、スポーツ整形外科学、スポーツ内科学、スポーツリハビリテーション、テーピング、救急処置、スポーツ栄養、スポーツ心理、など多くについて学習が勉強会、講習会、ワークショップ、研修会、講演会、などで実施されている。
基本的にはこれらはひろく「スポーツ医学」の内容でくくることが可能であり、スポーツ医学の研鑽が広く会員に求められている。これらについては(財)広島県体育協会やスポーツ医学委員会の全面的な協力体制のもとで行われている。また、独自のテキストなどの発行準備が進められている。
(倫理)
「トレーナーがやっていいこと、わるいこと」を明確にする。そのためには、今後発行するテキストで、会員に周知してもらう。国体でドーピング検査が導入されるが、トレーナーがスポーツ界で確実な位置付けを得るには、ドーピングについてトレーナーが確実な知識を持って、選手の教育に望まなければならない。
(実地活動)
国体にトレーナーが帯同する意味は大きい。公認アスレティック・トレーナーのカリキュラムをみても実地活動についての規定はなく、「トレーナーの実力」が測れない。このような、実践の場が与えられることでの多くの臨地体験がトレーナーの資質を向上させるだろう。
国体に加え、ミニ国体や強化チームへのサポートがさらに重要である。現在は、国体帯同トレーナーがリーダーになり、各種目の合宿などへの招へいに参加会員を募っている。これはたいへん重要なシステムであり、実際学んだスポーツ医学の知識が実践される重要な機会である。このようにして、徐々にトレーナーとしての実力が培われると考えている。最近は会員の中から国際大会への帯同なども増えており、我々の活動が認識された結果と考えている。

3.スポーツ医学教育の今後
 今後、トレーナーに関心のある人達がさらに増えると予想しているが、きちんとした知識と技術をもって、選手のサポートを実践しなければならない。そのために広島県トレーナー協会は努力を続けていくが、会員がどこで活動しようと「さすがに広島県トレーナー協会の人だ」と言われるようになりたいものである。会員諸氏の協力のもとでトレーナー協会の活動が成り立っている点を再度確認して積極的に活動していただきたい。

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